私には見える


* 嫌われマイノリティ思う1 *





おはようございます。私です。突然ですが私、見えるんです。何がといいますと、アレですよ。運命の赤い糸という奴です。
あ、今「ねーよ」って思いましたね? まぁそう思う気持ちは分からなくはないんですけどね。
私も周りの人に見えないものだと知ってびっくりしましたもの。
え?その小指に巻いてるもの、見えないんですか? みたいに。


「おい、お前だれと喋ってンだよ」

おや?

「ややっ。誰かと思ったら市立柿の種中学2年3組出席番号13番如月貴文くん通称『ブンちゃん』ではないですか! 」
「最早このクラスの奴らなら全て知っているであろうプロフィールを声高に叫びながら聞いてくんじゃねぇ。もともとヘンな奴だと思ってたが、ついに頭のねじがふっとんだか」


まったくなんて奴だ。みなさん、今話しかけてきた少年はブンちゃん。
身長168cm。所属部活ハンドボール部。少し長めで今風の黒髪(猫毛!)とすらりと余分な贅肉を持たない身体。
黒目はやや垂れ目ですがむしろポジションはツッコミというギャップの持ち主。
柿の種中学は元々顔面偏差値は高いのですが、それでも五本の指に入り実力をもっています。眼福ですね。


「まぁ、ご多分に漏れず、2年5組出席番号39番薬袋伊緒里ちゃんという可愛い可愛い剣道部の彼女がいるんですけどね…」
「なんであいつの話題になってるンだよ」
「リア充爆ぜろってんですよ…キューピッドも楽じゃないんすよ。大事にしろっていってんだよ!」
「お前に言われなくてもするっつーの! しかも何だよキューピッドって俺はお前にそんなことされた覚えネぇぞ」


知らなくて当然だっつーの! いおりんが部活の人間関係で悩んでいるときになんか漁夫の利狙おうとしてた剣道部3年の荻野目を華麗に蹴散らし、貴文君からこっそり頼まれた風を装って彼女の悩みを聞いてあげたのはわたし!
 顔が良くてもハンド命の朴念仁のお前のメシアだっての!


「あの子はマジいい子だから、もっと大事にしろよです。 しきりに爪をかみ始めるようになったら要注意だ『俺じゃ頼りないかもしれないけど、お前のこと心配なんだ』ぐらいいって熱い抱擁を交わしてやるんです!」
「なんだよその歯の浮く台詞! 言えるワケね−だろ。てかなんでお前にそんなこといわれなきゃいけないんだよ!」
「なんで? 決まってるじゃないですか!」


そんなの、そんなの彼女が。


「ブンちゃんの運命の相手だからに決まってるじゃないですかっ!」


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